今回は、高校の中でビジネスを行うという非常にユニークな活動をされている「有限責任事業組合 TSUSHO 鯉 Farm」芦田 智昭社長(H2年生まれ、3年生)にお話を伺いました。
写真_芦田社長
どうして津山商業高校に進学しましたか中3のときに各高校のパンフレットを見ていたときに、ベンチャービジネス、起業家精神といった言葉が目に留まりました。将来自分で事業をしたいという夢がありましたので、迷わずこの高校に進学しました。
−どんな事業がしたいですか
店というか夢は大きく(笑)デパートを持ちたいですね。
入って良かったことは「ベンチャービジネス」(学校設定科目)を学べることです。
入って良くなかったことは商業なので簿記の授業が多いのですが面白くない(笑)ですね。
−将来事業するなら簿記も役立ちますよ
はい、そう思い頑張って2級まで取りました。
今、頑張っていることはTSUSHO 鯉 Farmの事業です。立候補して社長になったので、責任も感じています。
−その服、変わってますね
錦鯉の飼育などで服が汚れるので、みんなで統一したユニフォームを着ることにしました。
これは自分で仕入れに行ったんですよ(笑)。
部活は何かしていますか中学から剣道をしています。
学校をPRしてください和気あいあいとした楽しい学校です。他の学校では学べないこと(ベンチャービジネスなど)が学べますし、机の上の勉強ばかりではありませんので、興味を持って学ぶことができると思います。
TSUSHO 鯉 Farmではどんな事業をしていますか毎年ベンチャービジネス(学校設定科目)を選択した3年生で事業を行っており、昨年度からLLP(Limited Liability Partnership有限責任事業組合)として活動しています。
先輩方が商品化したものは
津商猪ラーメン、鯉せんべい、美作三湯湯の素セット、e-積み木です。
中でも、社名にもなっている「錦鯉」を交配、孵化、飼育して販売する事業が、売上の中心になっています。
−錦鯉ですか、大変でしょう
私達は4月から始めたばかりでまだまだこれからです。
ここからは先生方にお尋ねしました。この水槽も全部手作りです。アングルを切断・穴あけし、ボルトでとめ枠を作り内側にコンパネを入れてブルーシートを張るまで全部、生徒自らの手で作成されたものです。ろ過装置も手作りなんですよ。


−どうして錦鯉を事業にしたんですか
2004年10月に発生した中越地震のニュース等で新潟県旧山古志村の鯉が危険な状況にあることを知った生徒たちが、「それなら自分たちで何とか救う手立てがないものか。そして私たちがさらにPRしたい」という気持ちがきっかけとなりました。ちょうど錦鯉をよく知っている教員がいたことも大きな支えとなりました。
早速、新潟県旧山古志村から親鯉(紅白)を譲っていただきました。交配・孵化させる一方で、稚魚も仕入れて飼育、販売したのが最初です。
最初はグリーンヒルズ付近に稚魚田を作り飼育しました。親鯉の交配・孵化に成功し、毛仔(「けご」孵化したての状態)を授業で使わなくなったプールに放流したのです。施設の有効活用という意味でもいい着眼点だったと思います。

写真_プールへの放流
−ここでは孵化までさせていますね。
はい、単に育てるだけでなく2年前からは親鯉に交配させ孵化させるところから行っています。2年前に孵化に成功した先輩方が記念して、鯉せんべいを企画されたそうです。

写真_稚魚
−困っていることは
今は5月下旬に孵化した稚魚が水槽にいます。昨年も同じ時期に孵化し、順調に成長していったのですが越冬できず全滅してしまいました。越冬させることができれば、販売価値も高まると思われますので今年は何とか対策を講じたいものですね。


−うまく産卵しますか
鯉の産卵はデリケートで水温にも気を使います。産卵準備のさせるために、校舎にあるシュロの木の皮をはいで束ねて、アク抜きをしてから水槽につけます。これに卵が付着し、孵化に最適な場所となるのです。これも最初はビニールテープなどで試してみましたがうまくいかず、試行錯誤してこれにたどりつきました。

写真_シュロの木(皮がはがれている)
−どんな錦鯉が高く売れますか
紅白と大正三色の2種類を育てていますが、錦鯉は上から見ることが多いので、左右対称であったり、模様であったり、愛好家では何百万円の鯉も取引されますので奥が深いですよ。
また、大きい鯉の方が高く売れますが、環境や飼育方法などの条件をうまく整えないと大きく育ってくれません。
本当に難しいですよ(笑)。

−販売はどうしていますか
毎年、鏡野町振興公社(夢広場)で春と秋に販売しています。当日は朝早くから、トラックの水槽に錦鯉を移し、現地で値段ごとに別の水槽に入れ替えるなど大変です。
また、お客様とのやりとりも全て生徒に任しています。接客について、お客様からクレームがあったりしますが、そうした事もいい勉強だと思います。
ここから再び芦田社長社長として何か新事業のアイデアがありますか友人の家が陶芸をしているので、携帯ストラップや小物(箸おきなど)を商品化して売りたいなと考えています。
売上目標は昨年が80万円くらいなので、それを上回りたいですね。
最後に会社をPRしてください1年間だけですが、汗を流して設備を整えたり商品である錦鯉を飼育したりするなかで、組織の一員としての役割や責任を果たすことの大切さを実感しています。「高校生の自分たちでこんなこともできる」という姿を見てもらいたいです。秋には頑張って育てた鯉や新商品を販売しますので、ぜひ来てください。
編集後記高校生なのに社長。
他の社員!?を鼓舞しながら錦鯉の飼育をしていた姿は、まさに社長でした。
秋には、育てた錦鯉を売る姿を見に行きたいと思います。
津山商業のベンチャービジネス(学校設定科目)から将来の起業家が生まれてくるのを期待しています。
(取材:沼、町田)